マラソンについて その1
どこから話すべきか。
2年前に10年以上務めた会社を辞めた時の退職金でロードバイクを買った。
毎日走ってるうちにこう思った。
「もっと早く、もっと遠くへ走りたい。」
しかしながら自転車を都会で走らせるには自動車や道路脇の落下物、そして信号機によるストップアンドゴーがありなかなか一定のペースで走るというのが難しいものである。
それならばと買ったローラーもマンションで使うには騒音がひどくあまり使わなかった。
「ならばジョギングだ。ジョギングで基礎体力をつけよう」
ジョギングは信号機が無い道さえ見つければほとんど立ち止まることなく走り続けることができた。
自転車に比べて運動強度が高いジョギングは俺の体力をどんどん高めてくれた。
元来、長距離走には自信があった俺は走った。
自転車よりも楽しくなっていた。
車も、信号も気にしなくていい。
部品もない、お金もかからない。
何より自分の体一つというのがたまらなく俺をやる気にさせた。
日に日にジョギングの距離は伸びていき最初は5キロでヘトヘトだったのも気がつけば10キロも平気に走れるようになった。
こうなるとアレである。欲が出てくる。
「俺は何キロまで走れるのだろうか」
限界はあっという間だった。
何度走っても13キロほどで右膝に激痛が走りそれ以上のジョギングを阻んだのである。
俗に言う「ランナーズニー」だった。
エアーサロンパス、サポーター、ストレッチ、湿布。何を試しても完治することはなく、靴が悪いのかと買ったランニングシューズも数回の使用で日の目を見ることはなくなったのだった。
ランナーズニーを発症してからは自転車に乗っていても稀に膝の痛みに悩まされ次第に自転車にも乗らなくなっていた。
それから1年。
ある時仕事がものすごく暇になった。
仕事がなく家でダラダラと酒を飲んでは萌えアニメを見る日々が続いていたある日、なんとなく膝が治っている気がして1年ぶりにジョギングをした。
気持ちがいい。
仕事がないことも、金がなくてカメラが買えないことも、社長とソリが合わないことも、走ってさえいれば忘れられた。
来る日も来る日も仕事がない。
来る日も来る日も俺は走った。
そして、ランナーズニー再発。
時間はあった。